粘土瓦の特性について 知っておいていただきたいこと
瓦屋根の良いところをたくさんお伝えしてきたのですが、瓦には天然素材だからこその特性があります。
弱点とは違って特性と敢えて言わせて下さい。
そして天然素材の土を使っているからこそ起きる特性についてご理解いただければと思います。
瓦は天然素材の粘土を原料として焼き上げた商品です。
粘土は採掘場所の山によって成分や性質が微妙に異なります。
粘土の可塑性や粘り気などが違います。
現在は配合粘土という形で山土や川土など配合をして収縮率などを調節した土を使っていますが、やはり少しずつ違いがあります。
そして瓦の防水性などの性能に問題はありませんので、ご安心してご利用いただければと思います。
- 色ムラ
- ネジレ・寸法
- 貫入(かんにゅう)
- ピンホール
- 黒ずみ
- 赤錆
- 表面の汚れ・コケ等
色ムラについて
粘土成分の違いや、気圧・気象条件による焼成窯内雰囲気の変化により、微妙な色ムラが発生している場合があります。
これは、同じ釉薬を使って焼いても、天候などの状況によっても少しずつ違いが出てしまうことがあります。
できるだけ同じ状況に近くして製造するように管理はしておりますが、完全に同じ状況は再現できないため微妙な色の差が出ることがあります。
できるだけ出ないような釉薬の配合など調整はしております。
昔のガラス質の多いブルー系やテカリの強い色は特に色の変化が目立ちやすかったようです。
現在はマット調の釉薬に代わってきて以前より安定感は増してきました。
塗装とは違う、焼き上げての発色である部分が自然素材の難しさです。
釉薬の薄いタイプの瓦はロットごとの色や発色の具合によって違いが出やすいため、弊社では邸別でロットを揃えて出荷を行うよう対応をしております。
ネジレ・寸法について
焼き物特有の若干のネジレや寸法のバラツキがある場合があります。また瓦は重ね合せてて施工していきますので、葺き上げ後に瓦と瓦の間に隙間ができることがあります。
プレスした状態のまま焼き上がってくるわけではなく、粘土の厚み部分の差などによってグッと戻ってきたり、逆に曲がっていったりします。
そこを長年のノウハウで焼き上がりが真っ直ぐな状態になるようにタメシと呼ばれる微調整をしております。
もともとピターっとくっつくような設計はしておらず、粘土の特性を考慮してクリアランスを設定しております。
F形瓦の場合、あまりにピッタリくっつけて施工すると上を歩く際にカケてしまうことがあります。
屋根の下地も多少たわむこともあるため少しクリアランスを取る必要があります。
また継ぎ目に水がいきにくいように、水がもし入っても野地に伝えないように見えない部分で防波壁のようなものを準備しております。
あまりにピッタリとくっついてしまっていると逆に毛細管現象という現象で水を引っ張ってしまうこともあるので、その点も考慮してあります。
貫入(かんにゅう)について
陶器瓦(釉薬瓦)は貫入(かんにゅう)と呼ばれる表面亀裂が発生する場合があります。これは陶器製品特有の現象で生地を焼いて焼結させる場合、粘土と釉薬の収縮率の違いにより釉薬表面に細かい亀裂が発生します。但しこれは製品生地までの亀裂ではなく製品の品質(漏水、強度など)には問題ありません。
これが貫入の写真です。
「瓦にヒビが入っているけど大丈夫なのか?」
っとお問合せいただくことがあるのですが、ほとんどはこの貫入現象の場合が多いです。
焼き上がってすぐの瓦にも目に見えないだけで細かい貫入は入っております。
屋根に使われてしばらく経つとホコリやチリや砂などが入りこんで目立つようになってきます。
では雨漏りの原因になってしまうのでは?っと思いますよね。
雨漏りの原因にはなりませんのでご安心下さい。
湯呑みの底の部分をイメージして下さい。
茶渋で線が入ってたりしますよね?
でもお茶はこぼれません。
表面の釉薬面だけのヒビですので、お茶が漏れることはありません。
この貫入は遅い速いは多少の差はありますが、釉薬を使っている瓦には必ず起こる現象ですが、製品の品質には影響はありませんので、ご理解いただければと思います。
ピンホールについて
陶器瓦(釉薬瓦)には釉薬面にピンホールと呼ばれる小さい凹みや粘土素地の露出が発生している場合があります。釉薬の気泡や粘土に含まれる有機物(亜丹)などが燃焼して発生するものですが、品質(漏水、強度など)には問題ありません。
これもたまにお問合せがあります。
「瓦に穴が開いてるけど、雨漏りしないのか?」
雨漏りの心配はございませんので、ご安心下さい。
釉薬面だけで雨を防いでいる訳ではなく、瓦の素地の部分で防水の役目を果たしております。
釉薬を使っていない瓦もあるので、ご安心下さい。
自然の粘土の中には細かい木の根だったり木端などの細かい物が入っていることがあります。
大きなものはメッシュ状のもので取り除いたりしていますが、小さなものは入る可能性があります。
1100℃以上の高温で焼く段階で燃えてしまうのですが、燃える際にガスがポンと出てその気泡分が釉薬をはじいてしまうのがピンホールの原因です。
大きなピンホールは目視で取り除いておりますが、細かなものは製品として出荷させていただいております。
また、ピンホールは瓦一枚を近くで見る場合には見えますが、10m離れたら全く分かりません。
自然素材としての瓦の特性としてご理解いただければと思います。
黒ずみについて
いぶし瓦は経年変化による黒ずみなどの変化が発生する場合がありますが、これは自然素材であるいぶし瓦特有の検証であり、品質(漏水、強度など)には問題ありません。
表面の炭素被膜の経年変化です。
私達はこのいぶし瓦の表面が黒ずんできたり、屋根にムラが出てくることを古美る(ふるびる)なんて呼んだりもします。
いぶし瓦はこの経年変化を楽しむための瓦と言っても良いと思っています。
お寺の屋根が独特のムラになってくるのもいぶし瓦だからこそですね。
赤錆について
いぶし瓦は粘土に含まれる鉄分が瓦表面にある場合、雨水により点状の赤錆が発生する場合があります。これは品質的な劣化ではなく、表面層に見られる現象であり、拡大したり、また内部に進行するものではありません。
表面の汚れ・コケ等について
施工後、ホコリの付着などによる色合いの変化が発生する場合があります。また、住宅の立地条件により瓦表面にコケなどが付着することがありますが、屋根材としての品質・性能及び耐久性を損なうものではありません。
立地条件でどうしてもコケの胞子などが飛んできて日の当たりにくい場所にはコケの付着などがあります。
砂埃などが堆積した部分にコケの胞子が付着することもあります。
そしてこれは瓦だけではなく、どんなものでもコケが付着することがあります。
車だって、長年動かされずにいた捨てられた車にはコケが付着したりしますよね。
家は動くことができず、ホコリや胞子などを自分で飛ばすことができないためどんな屋根材でも壁でもコケが出ることがあります。
以上粘土瓦の特性についてのお願いごとのような記事になりました。
宜しくお願いします。