屋根のプロから見て、一枚の写真から分かることを熱く書いてみます。
たった一枚の写真からでも、僕たちはプロとして一般の方が感じないような様々なことが言えるのではないかと気づいた土曜日の午後。
画像を見ながら、気づいた点をお話ししてたら、凄く驚かれまして・・・
少し熱くなっている状態で書いてみます。
庁舎から見える蔵の屋根だそうです。
まずパッと見て気づく点を挙げてみます。
- 左下部分の壁がなまこ壁
- 妻部分の袖瓦が紐袖
- 雪止瓦
- 鬼瓦と又ギ巴が古い
- 瓦の斜めのラインが揃っている
1.左下部分の壁がなまこ壁
左下の壁部分に格子状の模様が見えますが、これが「なまこ壁」と呼ばれるものです。
瓦素材の板状のものの継ぎ目に白色の漆喰で固めてあります。
この白いかまぼこ上の部分がナマコに似ているため、なまこ壁と呼ばれています。
古き良き日本の伝統的な蔵の仕様ですね。
大切に守られているのが嬉しいです。
2.妻部分の袖瓦が紐袖
切妻屋根の妻部分に使う瓦のことを袖瓦と呼びますが、ここの建物では「紐袖(ひもそで)」が使われています。
瓦の上下の重なり部分にボコっと盛り上がった部分が分かりますか?
ここが紐と呼ばれる部分です。
通常の並袖(なみそで)と呼ばれる袖瓦は擦り合せて真っ直ぐなラインを通す瓦ですが、この紐袖瓦はゴツゴツとした凹凸を見せるのが特徴です。
袖瓦も種類がたくさんあり、オリジナリティを表現できる部分です。
3.雪止瓦(ゆきどめかわら)
この写真は長野県ということもあり、雪を止めるために瓦の真ん中に輪っかがついたものが分かりますでしょうか?
これが雪止瓦です。
この輪っかで雪が落ちて来ないように止める機能を持っています。
雪の多い地域では、一段だけでなく2段、3段と分散して雪を止める屋根になっています。
4.鬼瓦と又ギ巴が古い
光の加減かも知れませんが、おそらく屋根を葺き替えた際に鬼瓦とその前にある又ギ巴(またぎどもえ)と呼ばれる瓦は以前のものをそのまま使っていると思います。
鬼瓦は傷みの程度にもよりますが、縁起をかついでそのまま再度使われるケースも多いです。
特に今回の瓦は鬼瓦と又ギ巴に、特殊な紋が入っているためそのまま使われたのではないかと思います。
古いモノと新しいモノとの融合が可能なのも瓦の良いところでしょう。
なんでも新しいのが良いわけではないんですね。
5.瓦の斜めのラインが揃っている
実はこの斜めのラインというのが、僕たち業界人としてはよく目がいくところです。
縦のラインや横のラインは簡単に揃えることができるのですが、斜めのラインは難しいんです。
上手な職人さんの施工した屋根は斜めのラインがビシーーっと揃っててキレイなんです。
真っ直ぐ見るだけでなく、斜めから見てみるとちょっと通な気分も味わえます。
以上の5つがパッと見て気が付くところです。
これも瓦屋の視点と、他の建築系の職人さんの視点では目がいく部分が違うんでしょうね。
やはり職人さんの世界って奥が深いですね。
職人さんの世界の奥深さが少しでも伝われば嬉しいです。